設立にあたって

呼吸器の疾患には肺癌・肺感染症・慢性閉塞性肺疾患(COPD)・気管支喘息・呼吸不全など様々な病気がありま すが、近年その多くの疾患において患者数の著しい増加が認められています。しかし、呼吸器病学の実地臨床および研究の重要性が叫ばれ、どの医療施設でも呼 吸器内科医師の需要が急増しているにもかかわらず、呼吸器内科医師数が大変少ないという現状があり、このままでは呼吸器病学の臨床や研究の充分な進歩が得 られないことにもなりかねません。日本呼吸器学会でも呼吸器科医師の増員や、呼吸器内科専門医の育成を緊急命題として位置付けされています。

このような現状に対して、西日本の呼吸器内科では、初期研修医を対象として、呼吸器内科学の理解と興味を促すた め年3回の講習会を開催し、また、学生や研修医を対象とした説明会を行ってきました。さらに、呼吸器専門医教育の一環として、年4回、各病院から症例を持 ち寄り、病理・放射線科専門医師の立ち会いのもとに症例検討会を催しています。2001年からは、各種呼吸器疾患の診断や治療における症例データを集積し 解析する共同臨床研究を行う機構を作り、多数の施設間共同研究を立ち上げて一定の成果を挙げ、1年に2度施設間の共同研究の提案と成果の発表会も行ってま いりました。

このように西日本の呼吸器内科が連携し一団となって、呼吸器内科専門医の育成や多数の共同研究を行う機構は珍し く、全国から注目されています。しかし、この機構は任意団体であったため、その基盤は安定したものではなく、社会的・倫理的制約を受けるため、本来の目的 が充分に発揮できていない面があり、国際協力の活動も念頭においた安定的な組織の構築が望まれていました。

そこで私共は、西日本の呼吸器内科から構成される「西日本呼吸器内科医療推進機構」というNPO法人を設立し、 本法人の目的に賛同して入会した、西日本の呼吸器内科の成員を会員として、そこから得られる会費と、NPO法人に賛同する個人・企業からの寄付金を財政基 盤として、その契約の主体及び会計処理を明確にし、以下の事業、すなわち、

  1. 呼吸器疾患領域における施設間共同の臨床・基礎研究の推進
  2. 呼吸器疾患領域における学術振興のための研究会開催およびその支援
  3. 呼吸器疾患に関する市民公開講座の開催
  4. 呼吸器内科専門医の教育・海外研修に対する支援
  5. 呼吸器内科専門医の育成のための海外研究者・医師の招聘

など呼吸器医療を積極的に推進することで、より一層の社会的信用を得て、公益に寄与していきたいと考えています。

NPO法人 西日本呼吸器内科医療推進機構
理事長 福井 基成